オープンレンジの決め方は?
※ポーカー用語についてはこちらを、レンジ表の見方はこちらをご覧ください。
前回のテーマは「そもそもなぜハンドレンジという考え方が大切なのか」だったね。
今回は、オープンレンジをどんな基準で決めればいいのか、具体的にどんなオープンレンジが適切なのかについて説明するよ。
まだ誰もレイズしてないときに、自分が最初にレイズして参加するってことだよね。
そう、それがオープンだね。
ところでチンアナゴちゃんはBU(ボタン)からどんなハンドでオープンしてる?
えっと、AAとかAKとかのプレミアハンドは当然参加でしょ。
あと、ポケットペアとかスーテッドコネクタとかも強い役ができそうだから参加するかなあ。
あ、でもBUはブラインドスティールしやすいから、割と弱いハンドでもレイズしちゃうかも。
うんうん。僕もそんな感じだよ。じゃあ、具体的にどんな基準でオープンするハンドを選んでるの?
え、私が今言った基準じゃダメ?
うーん、ダメじゃないけど、もっと細かい基準が欲しいかな。
例えば、スーテッドコネクタでも2h3hでは参加しにくいし、ブラインドスティールも7c2cとかJs6dではしないんじゃない?
あ、そういうのはフォールドするかなあ。ハンドが弱すぎる気がする。
だよね。広すぎるレンジだとショーダウンのときの勝率が悪いよね。
でも、そうかといって狭すぎるレンジだと、勝ていてたポットを逃しちゃうかもしれない。
ということは、広すぎず狭すぎない適切なオープンレンジがあるんじゃないかな。
あ、それ知りたいかも!
OK、じゃあまずはオープンレンジを決める基準を整理しようか。次の三つが大事なポイントだよ。
- ランダムハンドに対する勝率が高いハンドほどレンジに入りやすい
- ブラインドスティールの確率が高いポジションほど、弱いハンドでもレンジに入る
- ポストフロップで有利なポジション(インポジション)ほど、弱いハンドでもレンジに入る
すごく簡単に言うと、この三つがオープンレンジを決める基準なんだ。
えっと・・・プレミアハンド、ポケットペア、Aハイとかは勝率が高そうだからレンジに入れて、BUはブラインドスティールしやすいから弱いハンドも入れていいと。
あと、BUはポストフロップで必ずインポジションだから、また弱いハンドを入れるの?
じゃあBUってかなり広いレンジになりそうだね。
うん。BUは全ポジションの中で一番広いレンジになるよ。
じゃあ、この三つの基準をクリアしたサンプルレンジを紹介しようか。
計算上手のメカジョーズくん。
ハイ。
あ、ロボットだ。
メカジョーズくんは計算担当だよ。
メカジョーズくん、「さっきの三つの基準 おすすめのオープンレンジ」。
最近はホント便利になったよねー。
ハイ。BUですと、全ハンドの上位32.7%のこちらのレンジがおすすめです。
詳細は下の「こういう計算をしました」に書いてありますので、興味があれば開いてみてください。
こういう計算をしました。
1、BUからオープンするということは、後ろにランダムハンドを持つ2人(SBとBB)が控えているということです。ポーカーではコール(同じ額を出す)というアクションをすることで初めてストリートが次に進みます。ですので、ショーダウン時のポットは、参加者がそれぞれ同じ額を出し合って作られています(ブラインドは除く)。ということは、ランダムハンドに対する必要な勝率は約33.3%(3回に1回勝てばいい)となります。
2、おすすめのレンジは全ハンドの上位32.7%です。これは全ハンドの上位1/3でオープンしているのとほぼ同じです。もし、BUが上位1/3のハンドを持っていて、SB、BBが下位の2/3のハンドを持っているとすれば、BUがベストハンドを持っている可能性が高いでしょう。BUが上位1/3のハンドを持っているとき、SB、BBが下位2/3のハンドを持っている確率は、2/3×2/3=4/9です。これが「BUが上位1/3のハンドを持っているとき、そのハンドがベストハンドである確率」です。必要な勝率は33.3%=3/9ですので、この4/9というベストハンドの確率は必要勝率を満たしています。
3、ただし、この議論は「上位1/3のハンドは下位2/3のハンドに100%勝てる」という前提に基づいているため、あくまでも近似値です。実際には勝率が100:0になるようなハンドの組み合わせは存在せず、例えばAAに対して87sは23%ほど勝率がありますし、AKoに対してJTsは40%もの勝率があります。下位ハンドは上位ハンドに100%負けるわけではなく、ある程度は勝てるのです。ですので、必要勝率の33.3%を満たすためには、上位1/3よりもさらに狭いレンジのほうがいいかもしれません。
4、しかし、ハンドレンジを決める基準はランダムハンドに対する勝率だけではありません。BUの場合、ブラインドスティールのフォールドエクイティが大きいのと、インポジションの有利がありますので、より広いレンジで戦うことができます。これらのメリットがランダムハンドに対する勝率を補ってくれるでしょう。
5、ですので、全ハンドの上位1/3、32.7%のオープンレンジはベストではないかもしれませんが、少なくとも期待値としてはプラスのことが多いと言えます。
6、適切なオープンレンジをさらに厳密に評価するためには、人工知能やGTO(ゲーム理論)によるアプローチが必要です。GTOについては「超上級編」で解説します。
BUからオープンするということは、後ろにランダムハンドを持つ2人(SBとBB)が控えているということです。ポーカーではコール(同じ額を出す)というアクションをすることで初めてストリートが次に進みます。ですので、ショーダウン時のポットは、参加者がそれぞれ同じ額を出し合って作られています(ブラインドは除く)。ということは、ランダムハンドに対する必要な勝率は約33.3%(3回に1回勝てばいい)となります。
BUからオープンするということは、後ろにランダムハンドを持つ2人(SBとBB)が控えているということです。ポーカーではコール(同じ額を出す)というアクションをすることで初めてストリートが次に進みます。ですので、ショーダウン時のポットは、参加者がそれぞれ同じ額を出し合って作られています(ブラインドは除く)。ということは、ランダムハンドに対する必要な勝率は約33.3%(3回に1回勝てばいい)となります。
おすすめのレンジは全ハンドの上位32.7%です。これは全ハンドの上位1/3でオープンしているのとほぼ同じです。もし、BUが上位1/3のハンドを持っていて、SB、BBが下位の2/3のハンドを持っているとすれば、BUがベストハンドを持っている可能性が高いでしょう。BUが上位1/3のハンドを持っているとき、SB、BBが下位2/3のハンドを持っている確率は、2/3×2/3=4/9です。これが「BUが上位1/3のハンドを持っているとき、そのハンドがベストハンドである確率」です。必要な勝率は33.3%=3/9ですので、この4/9というベストハンドの確率は必要勝率を満たしています。
ただし、この議論は「上位1/3のハンドは下位2/3のハンドに100%勝てる」という前提に基づいているため、あくまでも近似値です。実際には勝率が100:0になるようなハンドの組み合わせは存在せず、例えばAAに対して87sは23%ほど勝率がありますし、AKoに対してJTsは40%もの勝率があります。下位ハンドは上位ハンドに100%負けるわけではなく、ある程度は勝てるのです。ですので、必要勝率の33.3%を満たすためには、上位1/3よりもさらに狭いレンジのほうがいいかもしれません。
しかし、ハンドレンジを決める基準はランダムハンドに対する勝率だけではありません。BUの場合、ブラインドスティールのフォールドエクイティが大きいのと、インポジションの有利がありますので、より広いレンジで戦うことができます。これらのメリットがランダムハンドに対する勝率を補ってくれるでしょう。
ですので、全ハンドの上位1/3、32.7%のオープンレンジはベストではないかもしれませんが、少なくとも期待値としてはプラスのことが多いと言えます。
適切なオープンレンジをさらに厳密に評価するためには、人工知能やGTO(ゲーム理論)によるアプローチが必要です。GTOについては「超上級編」で解説します。
おおー!メカジョーズくん、ありがとね!
でも実は私、勝率とかオッズとか、正直よくわかってないんだよね・・・。
OK、じゃあ次の回でオッズ、勝率、アウツとか、その辺がまるっとわかるように詳しく説明しようか。
ひとまず今回はオープンレンジを決める三つの基準と、具体的なおすすめのレンジの紹介ってことで。
うん、じゃあそれでお願い。
各ポジションのオープンレンジ一覧
じゃあ、さっそく9人テーブル(フルリング)のときのオープンレンジを紹介していこうか。オープンのベットサイズは2.25bb〜4bbぐらいを想定しているよ。
フルリングのUTGのオープンレンジです。
うわ、UTGのレンジ狭いなあ。
フルリングのUTG+1のオープンレンジです。
フルリングのMP1のオープンレンジです。
フルリングのMP2のオープンレンジです。
ちょっとずつ広くなってきたね。
フルリングのHJのオープンレンジです。
フルリングのCOのオープンレンジです。
フルリングのBUのオープンレンジです。
ここまでくると参加しほうだいだね。
フルリングのSBのオープンレンジです。
ふう、以上だね。じゃあ簡単にポイントだけ説明するね。
まず、アーリーポジションほどレンジが狭くて、レイトポジションほどレンジが広いことがわかるよね。
UTGとBUでどうしてこんなに差があるの?
さっきのオープンレンジを決める三つの基準を考えてみるといいよ。UTGは一番最初にアクションするから、自分の後ろに8人ものランダムハンドがいるんだね。だから、かなり強いハンドじゃないとショーダウンで勝ちにくいんだ。
しかも、ポストフロップでインポジションが取れるとは限らないし、ブラインドスティールは後ろの8人全員がフォールドしないといけないから大変だね。
なんかUTGって嫌なポジションだね。
うん。そもそもUTGというポジションの勝率が低いんだよね。
ちなみに、僕のハンド履歴を見ると、UTGからAKoで参加したときよりも、BUからKJsや66で参加したときのほうが利益が出ていたよ。
え!?AKはプレミアハンドなのに?
うん。ポジションはそれほど勝率に直結するんだね。僕も初めてそれを見たときはびっくりしたよ。
そっか、じゃあUTGでもっと弱いATsで参加しちゃうと・・・
もちろん相手にもよるけど、UTGからだと損になることが多いだろうね。
ATsがぎりぎりオープンできるのはMP2からだよ。
うーん、でもこの表を全部覚えるのは大変そうだなあ・・・。
じゃあ、こうやって覚えたらどうかな。
- UTG・・・・・・・AK+ TT+
- UTG+1・・・・・AQs+ 99+
- MP1・・・・・・AJs+ KQs 88+
- MP2・・・・・・ATs+ KJs+ 77+
- HJ・・・・・・・A8s+ KTs+ 66+(A9oは除く)
- CO・・・・・・・ポケットペアはすべてOK AハイはA2o〜A6o以外OK
- BU・・・・・・・ポケットペア、AハイはすべてOK スーテッドコネクタ系も割と入る
- SB・・・・・・・BUと比べてスーテッドコネクタが減ってKハイが増える
UTGから考えて、ハンドレンジが一つずつ広がっていくイメージだね。
COとBUはちょっと例外で、かなりガバッとレンジが広がるよ。
スーテッドコネクタとかはレイトポジションじゃないとダメ。
うーん、ちょっとはわかりやすくなった・・・のか?
まあまあ、初めはプレイしながら見てもいいし、ちょっとでもレンジから外れたら絶対ダメってわけでもないからさ。
やってれば何となく覚えるし、大丈夫だよ。
ところで、6人テーブル(6-max)のときのレンジはどうなるの?
変わらないよ。6-maxってことは一番最初にMP2がアクションして、HJ、CO、BU、SB、BBの順だよね。
この各ポジションのレンジ表を見てオープンしたりフォールドしたりすればいいよ。
OK、簡単だね。
あと、あくまでもこのオープンレンジは目安であって、特にカジノの標準的なレート(1/2$〜5/10$)向けのオープンレンジだよ。
そのレート帯で相手のプレイスタイルがまだよくわからないときは、このレンジで戦って大きな問題はないと思うよ。
でも、相手の情報がわかってきたら、このオープンレンジを広げたり狭めたりして調整することになるからね。
具体的にはどうやって調整すればいいの?
もうちょっと先の回でいろいろなプレイスタイルと対策を紹介するから、そこで話そうかな。結構長くなりそうなんだ。
OK!わかった。
じゃあ、今日のまとめに入ろうか。
今日のまとめ
- オープンレンジを決める基準は、「ランダムハンドに対する勝率」「ブラインドスティールの成功率」「ポストフロップのインポジションorアウトオブポジション」の三つ
- 各ポジションのオープンレンジ表を公開したよ
- アーリーポジションほどレンジは狭くて、レイトポジションほど広い
次回はひとまず【資料集】でオッズやアウツのことを説明するね。
そのあとでレンジ編に戻って、コールレンジと3ベットレンジについて話すつもりだよ。
コメント
コメント一覧 (5件)
BBのレンジ表が無いのはなぜですか?
BBは特殊なのでこの記事では省略しています。
BBの選択肢は、
・UTG〜SBのプレイヤーがリンプインしたときにレイズorチェック
・UTG〜SBのオープンにフォールドorコールor3ベット
などがあります。
リンプインに対するレイズのレンジはなかなか一概に言えませんので、snowieのプリフロップレンジやPioSOLVERなどのプリフロップソリューションを活用することをおすすめします。
コールや3ベットのレンジは別記事にまとめてありますので、そちらを見てみてください。
ボタンのレンジが33%より広いと思うのですが気のせいでしょうか。あと、説明されてる理論だとSBのオープンレンジは50%だと思うのですが違う理由が分かりません
>>おにさん
コメントありがとうございます。
ボタンのオーブンレンジのことをおっしゃっているのでしたら、これは全レンジの32.7%(434コンボ)になっています。もし気になるようでしたらPoker calculator Take EVなどのアプリでレンジを実際に入力してみてください。全レンジに対する割合とコンボ数が確認できます。
SBのオーブンレンジについてはいくつか意図があります。
確かにSBの必要勝率は50%なのですが、そもそもSBはポジションが悪く(アウトオブポジション)、中途半端に勝率がある状況で相手にうまく立ち回られるとフォールドせざるを得ないというデメリットがあります。
それと、こちらのほうが大きな理由なのですが、この初級編ではあくまでもカジノによくいるようなルースなプレイヤーに対して、初心者が安定して勝ち越すための戦略を意識して書いています。
そのため、オーブンレンジをタイトにすることで全体的な勝率を底上げし、初心者にはハードルが高いアウトオブポジションの難しい判断にできるだけ陥らないようにすることが大事だと考え、ここではかなりタイトなオーブンレンジを提案しています。
もし、適切な(相手にアジャストされることのない)SBのオーブンレンジについて興味があれば、
「poker preflop RFI GTO」
などで調べてみてください。
※RFI:Raise First In=オーブンレンジ
コメント含めて大変参考になります。ありがとうございます。最適解とは異なりますが、実際にカジノやアミューズで大負けしない第一歩はオープンのハンドレンジを絞ることですよね。私もかつては、UTGでAJoを捨てるのにかなり抵抗がありました。